二重の思考回路

仕事柄、数カ国語をあやつる語学の達人によく出会います。

その人たちがよく言うのは、
「できるだけ最初のころから母国語で考えないようにする」
ということ。

でもこれ、言うのは簡単、行うのは難しいです。

母国語と全く違う外国語をかなりのレベルまで
習得すると二つ目、三つ目は行きやすいかもしれませんが、
恐らく、最初が一番難しい。

日本語のレッスンでは韓国語が母国語の人以外は
彼らにとって日本語は母国語と全く違う言語になります。

日本語の文法はとても簡単です。
名詞に性はない。
主語によって動詞は活用しない。
時制もかなり大雑把。
主語無し可能。
名詞に単数複数は基本不要。
冠詞も無い。
音も少ない。

基本構造が違えば違う程、
ごく初期の段階で一言一句母国語と
照らし合わせたい人には相当苦しい言語にはるはずです。
語彙や表現的にも、例えば、ドイツ語と英語のような共通点は
ほぼありません。

その段階で語学の達人は
「自分の考え、話したいこと」と「日本語の文法」を
上手にすり合わせて最低限の文法と語彙で、どれだけ
伝えられるかを効率よくつかんでいきます。
あとはひたすらその積み重ね。
文法だけでなく、もちろん語彙も。そして文化的な背景も。


この段階を単に知識として文法を入れていくと
受け身で理解することは出来ても
自分からの発話にはほぼつながらないことになります。
話せるようにはなりますが、どこか不自然さの残る、
時には意味の通じない文を作りがちです。

でも、もっとも大切なのは母国語ででも、何語ででもいいのですが
「自分が何を言いたいのか」であり、それが無い場合、
語学をやる意味はそもそも無いと思います。

「自分の言いたい事」を母語の層で考えるか
目標言語の層で考えるかは、段階的な問題なので、
努力を継続しつつ、経過をみるしかないのですが、
「自分が何が言いたいのかを解りやすく伝える」思考回路と
「それを目標言語でどう言うか」という思考回路と
二重の思考回路が必要になります。

語学の達人はおそらくこれが三重にも四重にもなっているんでしょうね。











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